【錬錯シリーズ:第4部】
前回の記事のおさらい
【錬錯】 第3部 投資は本当に必要なのか
第3部の、投資だけがお金を前に進める方法ではないと言うテーマで、NISA投資だけでは完全ファイアーを目的にできるのはごく少数であり、働かづに暮らすには必須条件でもない、という結論に至りました。
一般的な投資のメリットとして「複利が効く」「時間を味方にできる」といった言葉を聞くと、若い世代向けの印象を持たれやすいかもしれません。
その見方は一理あります。
ただし、「自分の人生のどの段階で、何のために投資をするのか」という目的が明確になると、年代を問わず活かせる場面が見えてきます。
【目的次第で投資の質が変わる】
今回はそこに焦点を当て、同じ「複利」「時間」「収入源の分散」という言葉でも、世代ごとの状況によって意味合いが大きく変わることを見ていきます。
老後資金といっても、自分のために使うのか、家族に残すのかで考え方は変わります。
さらに、副収入とあわせて投資を続ければ、資金不足を補いながら投資の土台をつくることもできます。
その積み重ねが、セミFIREという目標につながる人もいるでしょう。
一般論だけでは自分ごととして見えにくかった内容も、将来的な目的と組み合わせて考えることで、ぐっと意味を持ち始めるかもしれません。
NISA投資の魅力は、自分の労働収入とは別に、資産を長期で育てていける点にあります。
今回の記事では、それぞれの世代ごとに一般論に加えて考え方を整理しました。
20代:「時間がある」という一般論
一般論での「時間がある」から「武器」になるといのは、少ない資金でも複利効果で雪だるま式に膨れ上がるからと言う背景があります。
一般的には、20代の投資メリットは「時間を味方につけられる」という言葉で説明されることが多いイメージですよね。
複利は運用期間が長いほど効いてくるため、同じ金額を積み立てる場合でも、20代から始める人と40代から始める人とでは、最終的な資産形成の余地が確かに大きく変わってきます。
また、少額からでも長期間続けやすいため、値下がり局面でも回復を待つ余裕があり、投資に早いうちから慣れやすいという点もよく挙げられます。
ただ、この説明だけでは、「何のために今やるのか」までは見えにくいかもしれません。
そこで+αとして具体的に未来の目的を想定する事です。
何を目標に置くかではなく、何かをしたくなった時の為の資金と言う事です。
突然フッと思うことはないですか?
「あれが欲しい!でも今は余裕がない!」これが答えです。
- 車
- ブランド
- 新製品
- 子供ができて結婚
- 自分で独立して事業を起こしたい。
これらすべて余裕資金がないと、思い立った時にすぐ行動できにくいですよね。
と言っても20代ならフットワークも軽く体力もあるので、副業やアルバイトなど、「動ける時間」を組み合わせれば 問題ないとも言えます。
そこで一つ言えることは、預金の金利を期待するより、ビットコインの運用ポイントのように値上がりを期待して投資をすると言う方法も入れておくと、将来的にできる余裕(余剰資金)が期待できます。
もちろん投資である以上必ず上がるとは言えませんが、長期的に見れば、よほどのことが無い限り下がり続ける相場も有りません。
そのため、収入がまだ少ない時期でも、副収入の一部を積立の原資に上乗せできれば、元本を積み上げるスピードが給与収入だけの場合より速くなります。
さらに、NISAの生涯投資枠に到達するまでの期間も短縮しやすくなり、その後の運用期間をより長く取ることにもつながります。
その結果、「時間を味方にできる」という一般論が、セミFIREの実現時期を前倒しできるという具体的な目的に変わります。
一般的なメリットだけでは「そのうちやればいい」となりがちですが、目的が見えると、「今のうちに動いておく理由」がはっきりしてきます。
もちろん、20代は収入や支出が安定しにくい時期でもあるため、生活を崩さない余剰資金の範囲で考えることが大切です。
30〜40代:収入源の複線化
一般論として、この世代でも収入源を複数持つこと(複線化)は大切だと言われます、むしろ給与収入だけでは苦しい、という家庭では必須と言えるかもしれません。副収入の資産から収入源を育てておくことは、家計を安定させる意味があるとも言えるでしょう。
ただし、30〜40代は結婚出産、子育て、住宅購入などのライフイベントが重なりやすく、教育費や住宅ローンといった支出も増えやすい時期です。
特に子育ては、子どもが成長するほど費用がかかりやすく、学年が上がるにつれて教育費の負担も大きくなっていきます。
そのため、収入が増えていても、自由に使える余余力は思うように残らないことが多いです。
そこで重要になるのが、収入源の複線化を家計の現実に合わせて考えることです。
副業に限らず、アフィリエイト、セルフバック、広告収入、コンテンツ販売、スキルを活かした小規模な受注など、少しずつ収益化できる方法を持っておくと、家計の助けになります。
こうした収入を一部でも投資の原資に回せれば、投資を止めずに続ける土台にもなります。
この時期は、思うように投資資金を確保できず、苦しさを感じることもあるかもしれません。
それでも、少しずつでも積立を続けられれば、後になってからの負担を軽くしやすくなります。
収入源を複数持つことは、そのための現実的な手段のひとつです。
つまり、30〜40代にとっての収入源の複線化は、一般論として正しいだけではありません。
家計の現実に合わせて、無理なく投資を続けるための工夫として捉えることで、より実践的な意味を持ってきます。
50代 終活と家族への配慮
一般論では、50代は「老後資産形成のラストスパート」と説明されることが多いです。年金だけで生活費をすべて賄うのが難しいと感じ始める時期でもあり、NISAの生涯投資枠を使い切るにはまだ間に合う世代でもあります。NISAは運用益が非課税になる制度として案内されています。
退職金など、まとまった資金の置き場所を考える必要が出てくるのも、この時期ならではです。
たとえば、老後後半に向けて、医療費や介護費用など、まとまって必要になる支出に備える考え方があります。
また、ケガや病気で思うように動けなくなったり、介護が必要になったりする可能性も、より現実的に意識しやすくなります。
そのため、いざというときに使いやすい形で資産の一部を確保しておくことには意味があります。
ここまでは、「自分の老後のために備える」という枠組みに収まる話です。
ただ、50代以降の投資は、そこにとどまらない意味を持ち始めます。投資の意味が「増やす」ことから、「整える」ことへと移っていくからです。
この世代では、「自分のため」だけでなく、「家族への配慮」という視点も大きくなります。
そのため、生前から少しずつ資産を移しておく考え方も、現実的な選択肢のひとつになります。
ここで関わってくるのが、贈与税です。
ここで考えるのはまだ早いと思うかもしれません。ただ、50代からの資産づくりは、自分の老後に備えるだけでなく、その先を見据えた準備という意味も持ち始めます。
今から積み上げる資産は、将来自分で使うためだけでなく、その先にどう引き継ぐかまで含めて考えることになります。
現金や資産をまとめて残すだけでも、相続のときに家族の手続き負担が増えたり、分け方をめぐって悩みが生じたりすることもあります。
暦年課税では、1年間に受けた贈与額に対して課税されますが、年間110万円の基礎控除があります。相続時精算課税制度にも年110万円の基礎控除があります。
また、相続開始前の一定期間に行った贈与は、相続財産に含まれる場合があります。これらは国税庁の案内で示されています。
つまり、年間110万円までの贈与であれば、贈与税はかかりません。制度の使い方によっては、相続時の負担を意識しながら資産を移していくこともできます。
ただし、贈与のやり方によっては定期贈与とみなされることがあるため、形式には注意が必要です。贈与税と相続税は別の制度として整理されています。
「老後資産形成のラストスパート」という一般論だけを聞くと、どうしても「自分のために貯める」という発想にとどまりがちです。
しかし、目的を終活や家族への配慮まで広げると、同じ積立や運用資産が、家族の負担軽減や相続への備えという別の意味も持つようになります。
一方で、運用期間が短くなる分、値下がりから回復するための時間も短くなります。
そのため、50代では、資産を増やすことだけでなく、どう整えて、どう備えるかという視点がより重要になります。老後準備のラストスパートは、単なる資産形成ではなく、終活や家族への配慮まで含めて考える時期だと言えます。
60代以降:守りながら活かす
一般論では、60代以降は新規に大きく増やすフェーズというより、資産を取り崩しながら生活を支えるフェーズに近づくと説明されます。
取り崩し率の考え方が実践的なテーマになり、現金だけで持つよりも、インフレによる購買力の目減りにどう対応するかが重要になります。
取り崩しながらも一定の運用を続けることで、年金の不足分を補いやすくなり、生活費のためだけに働く必要を減らせる可能性があります。
完全に働かないという選択だけでなく、働く日数や時間を減らして、生活の自由度を上げるという考え方にもつながります。
さらに、60代以降では、終活の一部として資産をどう整えるかも大きなテーマになります。
葬儀費用や整理費用、相続時に必要な資金など、残された家族がすぐに必要とするお金をあらかじめ意識しておくことには意味があります。
つまり、子どもたちに手続きや費用の負担をできるだけかけないように、資金の置き場所や使い道を整理しておくことも家族のためになります。
この世代では、「相続金を残す」という発想だけでなく、「家族が困らないように整える」という視点が重要になります。
そのため、資産をただ持ち続けるのではなく、必要なときに使いやすく、残すときにも負担が少ない形にしておくことが、現実的な備えになります。
一般論としての「取り崩しながら長持ちさせる」という説明は、どうしても守りの話に聞こえがちです。
しかし、目的を「働き方の自由度を上げること」だけでなく「家族に負担をかけない終活」にまで広げると、同じ取り崩しの仕組みが、老後の生活設計を支える実践的な道具として意味を持ち始めます。
また、一人暮らしの場合は、将来のことをあらかじめ想定し、あとで対応してくれる人に手間や費用の負担をできるだけかけにくい形に整えておくことも、ひとつの心づかいと言えるかもしれません。少額から資産を整えることも、そうした配慮を形にする備えのひとつと言えるのではないでしょうか。
まとめ
一般論だけでは動けない理由と、目的を明確にすると動ける理由
ここまで見てきたように、20代の「時間を味方につけられる」、30〜40代の「収入源の複線化」、50代の「老後準備」、60代以降の「守りながら活かす」といった考え方は、投資の入門書やコラムでよく語られる一般的な世代別メリットです。
どれも間違っているわけではありませんが、そのままでは「自分にはまだ早い」「今の自分には関係ない」と感じやすいのも事実です。
そこで大切になるのが、何のために投資をするのかという目的です。
たとえば、本業収入だけでは生活が厳しい場合でも副収入を得る事で、余力が出ます。
その余力の一部を投資に回していけば、元本を積み上げるスピードを早めることができます。
つまり、目の前の資金不足を補いながら、同時に投資の土台を育てていくことで、未来の余力と安心につながります。
こうした流れができると、一般的な投資のメリットは、単なる暮らしの安心感だけでなく、やりたいことができた場合の希望の資金にもなりえます。つまり、自分の人生設計に結びつく具体的な意味 を持ち始めます。
世代ごとに見ても、意味合いは変わります。
20代なら、時間を前倒しで使うための武器であり、何かを始めるためにもなる。
30〜40代なら、副収入を得る事で、家計の負担を和らげる手段にもなります。
50代なら、老後準備を整え、終活や家族への配慮まで見据える段階になります。
60代以降なら、生活を支えながら家族の資金的な負担を和らげる手段になります。
つまり、投資は一つの答えだけが正解ではありません。
同じ言葉でも、目的が違えば意味が変わるのがこのテーマの本質です。
一般論だけを眺めているうちは行動に移しにくくても、目的が明確になった瞬間に、投資は自分の事として捉えやすくなります。
次の第5部では、なぜ今の時代に投資が必要とされるのかを、物価上昇と貯金の実質的な目減りという視点から整理したうえで、将来に備えるための第一歩として、証券口座を開設する際のポイントを見ていきます。
錬錯シリーズ
【錬錯】第0部:プロローグ このシリーズで考えたいお金の話
【錬錯】第1部:お金が少ない人ほど、きれいごとでは動けない
【錬錯】第2部:小さく前に進むための整え方 実践ロードマップ
【錬錯】第3部:投資は本当に必要なのか
【錬錯】第4部:世代別で見る投資の目的論
